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大阪高等裁判所 昭和35年(ネ)1475号 判決 1963年5月31日

判   決

堺市向陵西町四丁二三三番地

一審原告

(一四六八号事件の控訴人、一四七五号事件の被控訴人)

並川茂雄

右訴訟代理人弁護士

一木正光

同市黒土町五四番地

一審被告

(一四六八号事件の被控訴人)

田中源二

右訴訟代理人弁護士

山本桂正

同市同町二六番地

一審被告

(一四六八号事件の被控訴人、一四七五号事件の控訴人)

竹山源太郎

右訴訟代理人弁護士

柴多庄一

住所不明

一審被告

(一四六八号事件の被控訴人、一四七五号事件の控訴人)

今野こと

山田勇

主文

一審原告の一審被告等に対する控訴をいずれも棄却する。

原判決中、一審原告と一審被告竹山及び山田に関する部分を次の通り変更する。

一審原告の一審被告竹山及び山田に対する請求をいずれも棄却する。

一審原告と一審被告との間に生じた控訴費用、及び、一審原告と一審被告竹山及び山田との間に生じた訴訟費用は一、二審を通じ、いずれも一審原告の負担とする。

事実

一審原告は、一四六八号事件につき、「原判決中一審原告敗訴部分を取消す。一審被告等は各自一審原告に対し、金五〇〇、〇〇〇円及びこれに対する昭和三〇年九月一日から完済まで年三割六分の金員を支払え。訴訟費用は一、二審共一審被告等の負担とする。」との判決、ならびに仮執行の宣言を、一四七五号事件につき、「本件控訴を棄却する。控訴費用は一審被告竹山及び山田の負担とする。」との判決を求め、一審被告田中は、一四六八号事件につき「本件控訴を棄却する。控訴費用は一審原告の負担とする。」との判決を、一審被告竹山及び山田は、一四六八号事件につき「本件控訴を棄却する。」との判決を、一四七五号事件につき「原判決中一審被告等敗訴部分を取消す。一審原告の請求を棄却する。訴訟費用は一、二審共一審原告の負担とする。」との判決を求めた。(以下略)

理由

一、一審被告田中に対する請求についての当裁判所の判断は、次の通り附加するほか、原判決理由に記載するところと同一であるから、ここにこれを引用する。

一審原告の一審被告田中に対する本件貸金債権残額が元金四五〇、〇〇〇円で、未払利息、損害金支払債務が一切免除され、右残額の弁済期についてはいわゆる出世払とする約束がなされたところ、同被告が未だこれが支払能力を回復するに至つていないという原審認定の事実は、原判決挙示の証拠に当審における(証拠――省略)を綜合して、これを認めるに十分であり、(中略)他に右認定を覆えすに足る証拠がない。

そうすると、右被告に対し、本件貸金債権が金五〇〇、〇〇〇円で、その履行期が到来していることを前提としてこれが支払を求める一審原告の請求を棄却した原判決は正当で、本件控訴(一四六八号事件)は失当であるから、これを棄却する。

二、一審被告竹山に対する請求についての判断。

主債務者である一審被告田中の、一審原告に対して負担する本件貸金元金債務が金四五〇、〇〇〇円であることは、前項説示の通りであるが、一審被告竹山が同被告田中の右債務について保証をした事実については、(中略)これを認めるに足る的確な証拠がない。却つて、(証拠―省略)によると、一審被告竹山が一審原告主張のような保証をした事実がないこと、一審被告竹山が一審原告から保証債務履行の要求を受けた際、一審原告に対し、本件借用証(甲第一号証)の保証人名下に押されている印鑑が、一審被告竹山の亡父のものなら責任をもつ旨言明したことがあるけれども、右借用証に押された印鑑が亡父のものでなかつたことが認められる。

そうすると、一審被告竹山が本件主債務を保証したことを前提としてなされた一審原告の同被告に対する請求の一部を認容した原判決は失当で、この点に対する同被告の控訴(一四七五号事件)は理由があり、反面、一審原告の控訴は失当であるから、同被告との関係で原判決は変更されねばならない。

三、一審被告山田に対する請求についての判断。

一審被告田中の一審原告に対して負担する貸金元金残額債務が金四五〇、〇〇〇円であることは第一項において認定した通りであるところ、一審被告山田において同被告名下の印影が同被告のものであることを認めていることにより、真正に成立したものと推定される甲第一号証に、原審ならびに当審における一審原告及び一審被告田中本人尋問の結果を考え合わせると、一審被告山田が一審被告田中の前示債務を保証した(但し、連帯保証ないし保証連帯であると認めるに足る的確な証拠がない。)事実を認めることができ、右認定を覆えすに足る証拠がない。

ところで、保証人が二人以上存する場合に、連帯保証ないし保証連帯であることが認められない場合には、保証人は主債務を平等に分割して支払う義務―いわゆる分別の利益―があることは、民法第四五六条の規定により明かであるが、右保証人の内一人の保証契約が無効であることが認められたような場合は、その保証契約が有効であると仮定して残存保証人の債務分担割合を算出すべきものではなく、残存保証人のみの保証が当初より存したものとして残存保証人間に平等に分割されるべきものであると解すべく、従つて、残存保証人が一人となつたときは、その保証人は主債務全額を支払う義務を負担するものと解すべきであるところ、本件主債務を保証した一審被告竹山及び山田の内、一審被告竹山の保証が前示の通り無効とされた以上、一審被告山田が残存保証人として本件主債務全額を負担すべきであるといわねばならないことは、上述の理由により明かである。

しかしながら、本件債務については、未払利息及び損害金の支払義務が一切免除されたのみでなく、いわゆる出世払の約束がなされているところ、主債務者が未だ支払能力を回復するに至つていないことは前認定の通りであつて、主債務について生じた右効力は一審被告山田の保証債務に及ぶことは、保証債務の附従性から肯認されるところであるから、一審被告山田の本件保証債務を履行する義務も未だ発生していないものといわねばならない。従つて、一審被告山田の右義務が発生していることを前提として、同被告に対し、本件主債務の半額、即ち金二二五、〇〇〇円の支払を命じた原判決は失当で、結局一審被告山田の控訴は理由があるから、同被告との関係においても原判決は変更を免がれないところであり、反面同被告に対する一審原告の控訴は失当として棄却されねばならない。

四、よつて、民事訴訟法第三八四条、第三八五条、第九五条、第八九条、第九六条前段を適用して、主文の通り判決する。

大阪高等裁判所第七民事部

毅判長裁判官 小野田 常太郎

裁判官 柴 山 利 彦

裁判官 下 出 義 明

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